日本のユリ/清水基夫/日本のユリとそれにまつわる花の文化が園芸専門家の清水氏により完成したのは嬉しいことであり文献としても実に貴重

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日本のユリ/清水基夫/日本のユリとそれにまつわる花の文化が園芸専門家の清水氏により完成したのは嬉しいことであり文献としても実に貴重なもの

昭和46年 376P 部数は少なそうです。資料用にもいかがでしょうか。

ユリをたたえる序にかえて
落合英二

大船フラワーセンターの清水基夫氏から、多年の塩を振けてまとめた『日本のユリ』を出版するについて、なにか序文のようなものを書けとの依頼を受けた。まことに光栄至極なことである。清水氏は,いまから4年前,私が東京小石川の岩谷から鎌倉東御門の谷戸の奥に引越してきたとき、鎌倉の植物同好者のつどいである「みちくさ会」を紹介し てくださったかたである。おかげで、三浦半島の山野に親しむ機会に恵まれるようになった。

やがて私は、この地方の山野にヤマユリが多いことに気がついた。鎌倉のヤマユリはだいぶ減ったというが,なお少なくないようで、7月初旬になると、森にかこまれたわが家から出勤の道すがら、〇郁とした香りに思わず立ちどまると、生い繁った草のあいだから、あでやかな姿を現わしているのを見かけることがある。地味がヤマユリに適している と思ったので、デパートでそのりん茎を買い求めて、わが家の裏山に植え付けてみたが、 かなりの成績で、毎夏,枝もたわわに花をつけ、芳香をただよわせてくれる。このユリは 鎌倉野生のものに比べて花期が1か月以上おくれ、8月中旬ごろ満開になる。おなじ山で育ちながら、なぜ花期がずれるのか、おもしろいことである。

この8月の花を眺めるにつけ、思い出すのは那須大丸温泉のヤマユリである。私は若いころ、毎年8月になるとこの温泉にでかけ, 研究データの整理や読書に、2~3週間すごすのをつねとしていたが,この那須岳中腹のひなびた宿の野天風呂のまわりには、点々とヤマユリが咲いていた。山の大気のなかで,この景色を眺めながら,湯けむりにひたるこ とが,研究上の謎の打開に苦慮したり,想を練ったりする毎日の仕事に、どれくらい役にたったかわからない。

わが家の裏山で私を楽しませてくれるいまひとつのユリは、ササユリである。このユリは京都郊外の山から移植したものであるが,毎年6月になると,ピンクがかった白い上品な花を咲かせてくれる。ヤマユリの花が濃焼なのにたいして、ササユリの花は、姿も香りも清楚そのもので、古きよき時代の日本の女性をしのばせるものがある。関西の山野を歩 くと、よくこの花の咲きあとを見かけるが、三浦半島では見たことがない。あるいはこの土地に合わぬのではないかと気にしながら育てている。

おなじ清らかさを感じさせるユリでも、はるかに現代的なのは、食卓の飾りなどによく見受ける、テッポウユリとカノコユリである。両方ともヨーロッパでも見かけたような気がするので、園芸種と思いこんでいたところ、テッポウユリは琉球カノコユリは九州の原産だそうである。

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